日常生活の中で、首や肩の凝り・痛みに悩まされている方は非常に多く、日本国内では約1,000万人以上が首・肩こりを自覚しているともいわれています。特に、スマートフォンやパソコンの長時間使用が当たり前になった現代社会では、年齢や性別を問わず、慢性的な首こり・肩こりを訴える方が急増しています。
「ただの肩こり」と軽視されがちですが、なかには重篤な神経疾患や骨格異常が隠れていることもあるため、長引く症状がある場合は医療機関への受診をおすすめします。
首・肩の凝りや痛みの原因
1. 姿勢不良(ストレートネック・猫背)
デスクワークやスマホの長時間使用により、首が前に突き出たストレートネック(スマホ首)や、背中が丸まる猫背姿勢が習慣化すると、首・肩まわりの筋肉に過剰な負担がかかります。結果として、慢性的な筋肉疲労や血流障害を引き起こします。
2. 筋肉の血流不足と疲労物質の蓄積
筋肉は本来、収縮と弛緩を繰り返すことで血液を循環させています。しかし、長時間の同じ姿勢や運動不足で筋肉の動きが減ると、乳酸などの疲労物質が蓄積し、凝りや痛みを引き起こします。
3. 精神的ストレスや自律神経の乱れ
精神的ストレスが続くと交感神経が優位になり、筋肉の緊張状態が持続しやすくなります。これにより、首や肩の血流が悪くなり、慢性的な凝りの原因となります。
4. なで肩・筋力低下
特に女性に多い「なで肩」は、首や肩の筋肉にかかる負担が大きくなりやすい形状です。また、加齢や運動不足による筋力の低下も、筋肉のサポート力を弱め、凝りの原因となります。
このような症状はありませんか?
- 首や肩の奥が常に重く感じる
- 肩がパンパンに張っていて、動かしにくい
- 首を回すとゴリゴリ音が鳴る
- 頭痛や吐き気を伴うことがある
- 目の疲れやかすみと連動して首が痛む
- 起床時にすでに肩がこっている
- マッサージをしてもすぐに元に戻る
こうした症状が数日以上続く場合、単なる肩こりではなく、筋肉や神経、骨格の異常が潜んでいる可能性もあります。
首・肩が凝りやすい方の特徴
姿勢が悪い方
長時間にわたってパソコンやスマートフォンを操作していると、自然と背中が丸まり、頭が前に突き出た姿勢になりがちです。この姿勢では重心が前方に偏るため、首への負担が増加します。さらに、いつも同じ側の肩にバッグをかける習慣がある方も、身体のバランスが崩れて首の筋肉に疲労が溜まりやすくなるため、左右交互に持ち替えることを意識しましょう。
なで肩の方
なで肩の方は首が長く見えやすく、その分、頭を支える首や肩の筋肉にかかる負担が大きくなります。特に女性にはなで肩の傾向が多く見られ、月経や妊娠、更年期といったホルモンバランスの変化によって、首や肩の痛みが強まることがあります。
目の疲れが溜まりやすい方
目と首は近い位置にあるため、目が疲れるとその緊張が視神経を通じて首周辺の筋肉に影響を与えます。その結果、筋肉がこわばり、首や肩に凝りや痛みが生じやすくなります。
首・肩凝りの対処法
首や肩の凝りを解消するセルフケア
- 正しい姿勢の意識:モニターの高さや椅子の高さを調整し、背筋を伸ばして座りましょう。
- こまめなストレッチ:デスクワークでは1時間に一度立ち上がり、肩甲骨を動かす運動を取り入れましょう。
- 湯船に浸かる習慣:筋肉の深部まで温め、血行を促進します。
- アイマスク・温タオルで目を温める:目の緊張を和らげ、首への波及を防ぎます。
首・肩凝りに対する治療
慢性的な肩凝りや首の痛みには、医療機関での適切な治療が必要となる場合があります。治療では、筋肉の緊張を和らげ、血行を促すことで、不快な症状の軽減を目指します。
理学療法(物理療法)
筋肉の緊張をほぐす
理学療法士やスタッフによるマッサージや手技療法により、こわばった筋肉を丁寧に緩めます。血流が改善されることで老廃物の排出が促進され、痛みや凝りの緩和が期待されます。
温熱療法で筋肉を温める
ホットパックや超音波による温熱療法を活用し、筋肉の深部まで温めることで血流を良くし、過度な緊張を和らげます。慢性の凝りに対して有効とされています。
薬物療法
消炎鎮痛剤(NSAIDs)
湿布や飲み薬として使用され、炎症を抑えながら痛みを緩和します。凝りがひどく、日常生活に影響を及ぼしている場合などに処方されます。
筋弛緩薬の内服
筋弛緩薬を内服することで、筋肉の過緊張を軽減し、症状を和らげます。特に自律神経の影響による凝りに対して使用されることがあります。
ハイドロリリース(筋膜リリース注射)
近年注目されている治療法の一つに「ハイドロリリース(Hydro Release)」があります。これは、生理食塩水などを筋膜の癒着部位に注入することで、筋肉や筋膜の滑走性を回復させ、凝りや痛みを改善する注射療法です。
特徴と効果
薬剤ではなく主に生理食塩水を使用するため、副作用のリスクが少なく、薬剤に不安のある方にも安心して受けていただけます。
筋膜と筋膜の間の癒着を物理的に剥がすことで、痛みや運動制限の原因を根本から改善します。
頚部(首)・僧帽筋・肩甲骨周囲など、首肩こりが慢性化している部位にも効果が期待されます。
対象となる症状
- 頑固な肩こりや首こり
- ストレートネックによる筋緊張
- デスクワークやスマホ使用による慢性疲労
- 手技や物理療法では改善しにくい局所的な硬さ
治療の流れ
- 触診や超音波(エコー)を用いて、筋膜の癒着が疑われる部位を確認します。
- 細い注射針で、生理食塩水を癒着部位に注入します。
- 数分で筋肉の柔らかさが回復することもあり、即時効果を実感される方もいます